Pastel Lover


「はあー...やっぱり星乃か。まあ、あれだけ見てたもんね」


「そ、それは...」


「あたしも人の事言えないんだけどさ。桐山くんが星乃のこと見てるのを、ずっと見てたわけだから」



苦笑する先輩に、俺も同様の表情を浮かべる。

恥ずかしいな。でも、目で追ってしまうし、視界に入れてしまうんだから仕方がない。しかもそれが無意識なのも困る。やっぱりこれは皆共通なんだな。



「告白とかは、考えてないの?」


「...いつか、とは思ってます。いつになるかはわかりませんけど」


「そっか。その時は...頑張ってね」


「ありがとう、ございます」


「...じゃあそろそろ帰ろっか。もう下校時間だしね。あたし最後だと思うし戸締りするから、先に帰ってて」


「わかりました。じゃあ」


「うん。また明日ね」



軽く頭を下げて、先輩の横を通り過ぎる。



...笑顔を浮かべて、俺に頑張ってと言った。その時、彼女はどんな思いでいただろうか。


帰る間際、ふと準備室を振り返った。



そこの奥にある窓に映った先輩が、泣いていたこと。その笑顔が、彼女の強がりだったこと。



知らないふりをして、俺は部室を出た。
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