Pastel Lover


彼女の初めて見た泣き顔が、脳裏に焼き付いて離れなくなって、それを思い出すたびに喉の奥が焼けるように痛む感じがした。


靴箱へ向かったとき、ふと顔をあげて気づいた1つの影。

俺は1度立ち止まり、近づく。



「...部長?」



なんで、どうして彼がここに?

部室を出るときには俺と坂田先輩以外いなかったから、もう他の部員はとっくに帰っているはずなのに。


靴箱に凭れかかっていた部長は、俺の声にはっとしたように、こちらを向いた。



「どうしたんですか?帰ったんじゃ...」


「あー...ちょっと、人を待ってて」



疑問を投げかければ、部長は少し考えるような仕草を見せ、それから返答が返ってきた。


部長が誰と仲がいいだとか、そういうのはわからない。いや、わかっていたらそれはそれでおかしいんだけれど。でも、なんか。



「...あの、違ったらすいません。部長が待ってる人って、」




彼はまっすぐに俺の目を見つめる。なんとなく、俺が次に何を言うのかわかっているような感じもした。




「坂田先輩ですか?」
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