Pastel Lover
「...あいつの気持ち解ってるから、怖くて伝えらんねぇんだよ。なっさけないよなあ」
部長は、そう自分を嘲る。
ただ俺は、そんな彼を黙って見つめることしかできなかった。
俺だって伝えることは怖い。意気地なしで、情けない。自分でも思う。だから、部長に情けなくなんかないですよ、なんて言ってしまったら、自分を許すようでどうしても言えなかったのだ。
「坂田、まだ部室にいたか?」
「あ、はい。俺が出るときにはまだいました」
「そうか、なかなか降りてこないから入れ違いになったのかと思ったからさ、よかった」
また、思い出す。彼女の泣き顔。
もうすぐ降りてくるだろうか。その時には俺はここにいてはいけないのだろう。
「今はまだ言えねえけどさ」
上を向いて、彼は話す。どこか遠くを見ている、そんな目をして。
「言える自信持てるように、一緒に帰ったりして距離縮めれるよーにしてんだ。そんでいつか伝えたとき、ちょっとでも困ってくれたら、それでいい」