君が為
私は居住まいを正すと、二人を真っ正面から向かえた。
声が震えてしまわないように、グッとお腹に力を入れる。
「私は、天城 美琴(あまき みこと)と申します」
二人の向ける敵意になんて、負けてたまるか。
そんな想いで、私は頭を下げた。
沖田さんと藤堂さんは一瞬驚いたように眼を合わせると、また無表情を決め込んみこちらを睨む。
私も、二人を見据えたまま。
「早速で申し訳ないが、我が局長等に貴女を連れて来るよう仰せつかった。……よろしいですか」
局長、等……?
局長って何?名前……?
だとしたら、すごく変わってる。
最近キラキラネームが流行ってるって聞くけど、そう言った類なのかな?
「何か不都合でも」
藤堂さんに無言の圧力を掛けられた私は、首を振って彼らに従うほかなかった。
せめてもの反発として、私は藤堂さんからの視線を弾き返すかのように、睨む。
「もちろん、構いませんよ……藤堂さん」
藤堂さんは面白そうに口角を上げると、私を局長さんとやらの部屋まで案内した。
「局長……沖田と藤堂です。例の者を連れて参りました」
中から、“入れ”と声がすると、向こう側から障子が開かれた。
真っ先に眼が向いたのは、上座。
上座にはがっしりとした肩幅を持つ、怖い顔の男の人が三人座って居た。
その下に、二人の男の人がこちらを訝しげに凝視していた。
これはまた、息が詰まりそうだ。
私は心の中で溜息を吐くと、重い足を動かして、部屋に一歩、踏み込んだ。