君が為
私は上座の三人と向かい合う形で、座らされた。
左右には、男の人が二人ずつ。
男たちは四方八方から油断なく、目を光らせてくる。
背後は壁。
逃げようにも逃げられない状況に、嫌な汗が一つ、流れた。
「……眼が覚めたばかりと聞いたが、身体の方はどうなんだ」
感情も何も込められていない言葉。
僅かに、目線を下に落とした。
たいして気にもしてない癖に……。
「大丈夫です。御迷惑をお掛けしました」
私はそう言って、深く頭を下げた。
何でかは知らないけど、赤の他人である私を介抱してくれてたみたいだし。
礼儀はきちんとしとかないと……
あとで何か言われるのは嫌だからね。
「して、其方……名は何と言う」
煙管の灰を落としながら、真ん中に座る人が言った。
「……」
冷徹な眼。
何もかも、全てを見通すかのような、そんな眼。
「……無礼とは思いますが、言わせて頂きます」
私の、嫌いな目だ。
「……人の名を聞く時は、先ず其方から名乗るのが、筋ではないでしょうか」
「「なっ………」」
私の発言に、部屋の空気が大きく揺れた。
上座の右にいる人が、唖然として腰を上げる。
「ぶ、無礼な……此方の方を、誰だと知っての物言いか‼︎」
「ですからっ‼︎……最初に無礼だと謝ったではありませんか」
ピシャリと跳ねつけると、男は顔を真っ赤にして私を睨み付けた。
重苦しい沈黙が続く中、最初にそれを破ったのは煙管の男だった。
「……くっ…」
咽喉から押し出すような掠れた、低い笑い声が、耳に付く。
不快だ。
私は、冷めた目で男を見据え続ける。
男は一頻り笑うと、面白そうに私を見た。