君が為
「ならば、家は何処だ」
「あ……龍賀街です。近くに、枝垂桜で有名な野原があるって巷では有名な……」
そこまで言って、私は異変に気付いた。
皆、私の話に首を傾げている。
「龍賀街……。誰か、聞いた事はあるか?」
芹沢さんの言葉に、一斉に首を振る。
その瞬間、身体中から血の気が引いていった。
龍賀街を知らない?
日本でも有数の桜の名所なのに……今も日本中、いや世界中から観光客が来る。
最近此処に来たばかりだったとしても、知らない訳がない。
「あの、此処は何処ですか」
「壬生村だ、京のな」
壬生【村】?京?
市町村合併のこの時代に村?
少なくとも、私の知っている限り、この辺りに村は一つもない。
もちろん、京なんて地名もない。
なのにどうして、村という単語が出てくるのよ……。
「京って……」
「京は京だ。いくら田舎者でも、京の都と言われれば分かるだろう。なにせ、天皇が居るのだからな」
「は……?」
京って、京都のこと……?
というより、天皇が京の都に?!
まさか、あり得ない。