君が為
「あいつ……口は悪いが、あれでもお前のことを気に掛けてんだ」
「ぇ……」
藤堂さんが、私のことを気にかけてる?
思わず目をぱちくりと瞬かせる。
「稽古が厳しかったりするのも、早くお前に護身術を身につけて欲しいからだよ、きっとさ」
護身術を……私に。
藤堂さん……
「いい奴だから、彼奴は」
分かってやってくれ
そう言って心配そうに眉を下げる永倉さんに、私は薄く微笑みを浮かべてみせる。
「はいっ」
また出逢ってそれほど日は経ってない。
それでも、永倉さんの話には頷けた。
藤堂さんは確かに口は悪いけど、なんだかんだで優しくしてくれる。
稽古のことは完全に私が悪いし、それにこの後も隊務で忙しい永倉さんに、私のことでこれ以上迷惑を掛けたくなかった。
「大丈夫です。私、藤堂さんのことを嫌ったりなんてしません」
永倉さんは私の気持ちを察したのか、穏やかな笑顔を向けて、大盛りの御飯を頬張ってみせた。