君が為
永倉さんて……いい人だな。
「ふふっ……いただきます」
私も、手を合わせて温かいお味噌汁を口に含む。
料理なんて、家庭科の実習以来で最初は崩壊寸前だったけど、手慣れた今は、横を向いててもみじん切りができるようになった。
うん、ちゃんと出汁も効いてるし……美味しいかも。
ーーーー!
「………?」
ふと、何処からか視線が向けられた。
その視線に最初に気付いたのは、永倉さん。
誰にも悟られないように、永倉さんは私の耳元で囁いた。
「ーーおい……新見さん、お前のこと睨んでないか」
ああ、やっぱり。
痛いぐらいに感じるこの視線は、新見さんのか。
私は片頬を歪ませながら、お茶を啜る。
お茶と一緒に、溜息を飲み下した。
局長の一人である新見 錦さん。
芹沢さんの側近みたいな人で、様々な雑務をこなしているらしい。
初対面の時同様、私のことを嫌っている。
それはもう、清々しいほどに嫌われていた。
私と隊務が重なると邪魔しかしてこないし、何かといちゃもんを付けては騒ぎ立てる。
皆が居ない所に来ると、素を曝け出して暴言を吐く始末。
此処までされると、もう真剣に相手をするのが面倒くさい。
今だって……
「………」
無言で睨みつけてくる新見さん。
そんなに見たって、何にも出ませんよーだ。