君が為

「あっ……と、藤堂さん…っ……沖田さんも」


襖の向こうにいたのは、着崩した着物の裾に手を入れた沖田さんと、柱に身を預けた藤堂さんだった。



二人とも芹沢さんに向かって、一礼する。




「ーー気が済みましたか……芹沢先生。そろそろこの子、俺らが貰って行きますから」



「わっ!!?」



沖田さんはまるで子猫でも持つかのように、私の襟首を引っ張った。



そして、ぽいっと廊下へ投げられる。



「……っ‼︎」



尻餅覚悟で眼を瞑ったものの、いつまで経っても痛みは襲って来ない。



あ、あれ……



恐る恐る眼を開けると、呆れ顔をした藤堂さんとバッチリ眼が合った。




「重ぇよ」




固まってフリーズする私に、藤堂さんはそう吐き捨てた。



「と、藤堂さん……」



今度は違う意味で固まりたくなるものの、ずっとこうしているわけにもいかず、身体を起こした。



どうやら藤堂さんを下敷きにしていたらしい。



「あの……すいませんでした」



「別に」




藤堂さんはクルッと身を翻して廊下を進んで行く。



「……」




眼、合わせてくれなかった。



やっぱり稽古の時のこと、まだ怒ってるんだ。



当たり前だよね。




私はそこまで出掛かった溜め息を呑み込むと、二人の後を追った。



「あ、天城っ‼︎」



「……」



角を曲がる時、新見さんとすれ違ったけれど、無視。



今は新見さんなんかに構ってる暇ないんだから。



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