君が為
……歩くの、速いな。
二人の背中はどんどん離れていく。
私、速歩きなのに、なんで差が開く一方なんだろう。
二人と私の一歩の差が大きすぎるんだって。
「んじゃ…中に近藤さんが居るから、相手しておいで。平助、巡察いくよ」
結局追いつけないまま、近藤さんの部屋にたどり着いた。
僅かに肩が上下する私。
藤堂さんと沖田さんは涼しい顔をして立っていた。
近藤さんが私に用事?
何だろう。
「あ、隊務……お疲れ様です」
疑問を抱えなから、私は巡察に向かう二人に頭を下げる。
背中が見えなくなると、私は声を掛けて部屋に入った。
「おお、天城くん……待っていたよ」
近藤さんは私に眼を向けると、読んでいた書物をパタリと閉じた。
読書中だったんだ。
邪魔しちゃった……出直した方がいい?かな。
「楽にして構わんよ」
近藤さんは優しく微笑むと、姿勢を正した。
「は、はい!」
私も習って背筋を伸ばす。
「実はだな天城くん。
今度、大阪に行くことになったんだがーー」