君が為

……歩くの、速いな。



二人の背中はどんどん離れていく。



私、速歩きなのに、なんで差が開く一方なんだろう。



二人と私の一歩の差が大きすぎるんだって。



「んじゃ…中に近藤さんが居るから、相手しておいで。平助、巡察いくよ」



結局追いつけないまま、近藤さんの部屋にたどり着いた。



僅かに肩が上下する私。



藤堂さんと沖田さんは涼しい顔をして立っていた。



近藤さんが私に用事?
何だろう。



「あ、隊務……お疲れ様です」




疑問を抱えなから、私は巡察に向かう二人に頭を下げる。



背中が見えなくなると、私は声を掛けて部屋に入った。



「おお、天城くん……待っていたよ」



近藤さんは私に眼を向けると、読んでいた書物をパタリと閉じた。



読書中だったんだ。



邪魔しちゃった……出直した方がいい?かな。



「楽にして構わんよ」



近藤さんは優しく微笑むと、姿勢を正した。



「は、はい!」



私も習って背筋を伸ばす。



「実はだな天城くん。
今度、大阪に行くことになったんだがーー」


< 32 / 33 >

この作品をシェア

pagetop