君が為
「ーーーっ‼︎」
頭の中に、子供の笑い声が響く。
あまりに突然過ぎて、身体が強張った。
「どうした?」
異変に気付いた清春が、心配そうに顔を覗き込んでくる。
清春には、何も聞こえなかったんだ。
自分にしか聞こえなかった声。
最初は聞き間違いか何かかと思ったけど、それもどうやら違うらしい。
もちろん、この場には子供なんていないし、この辺りは滅多に人が寄り付かないほどの穴場だ。
清春の腕から逃れると、辺りを見回した。
ノイズは消え、子供の声も次第に遠ざかる。
だけど、頭の中には同じ場所の映像が、連続して流れていた。
「おい、大丈夫か」
「……」
頭が痛い。
ガンガンと鈍い痛みが、私を襲う。
耳鳴りも酷い。
私は痛みに堪えながら、本能的に足を動かした。
映像で映っている場所は、ここからそう遠くない。
行ったこともないのに、何故かそう思った。
身体が何かに導かれるように、私は突き動かされる。
何処かもわからない道をひたすらに歩く。
不思議と、恐怖はなかった。
生い茂った木々のトンネルを抜けると、そこには小さな石の祠がポツンと立っていた。