君が為
「なんだ、此処は……。美琴は知ってたのか?」
後ろから追いかけて来たらしい。
清春は辺りを見回すと私に問うた。
小さく首を振る。
私は何かに操られるかのように、石の祠の前に膝を付いた。
白と青い花が、まるで祠を守るように咲き乱れている。
「……清春、これなんて書いてあるか読める?」
祠の側面に文字らしき何か。
私はそれをなぞって見せながら、清春に訊ねた。
「……だめだ、読めない。つーかこの祠、いつの時代のものだよ。見た目からして、相当昔のだぞ」
清春が溜め息を吐いたその刹那、再び頭に鋭い痛みが奔った。
「あっーーー‼︎」
あまりの痛みに、思わずその場に崩れ落ちる。
「ーー美琴っ‼︎⁉︎」
清春の驚いた声が、遠くの方で聞こえた気がした。
身体が、動かない。
息が、上手く出来ない。
何も、感じない。
「……き……ょ……っ」
言葉が声にならない。
「美琴っ……大丈夫だ、落ち着け」
清春の声が、まるで子守唄のように心地よく耳に入ってきた。
「俺がずっとーーー」
清春ってば……
その言葉はもう言わないでって、言ったばっかりなのに
ほんと、馬鹿……
「ーーー美琴」
清春のその言葉を最期に、私の意識は深い闇に堕ちて行った。