君が為
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「……ん」
目を覚ますと、見慣れない天井が眼に飛び込んできた。
「……此処は……一体」
見慣れないのは天井だけじゃない。
畳も、隅に置かれている机も、この布団も……知らない物だらけだ。
小さな不安に、私の鼓動は僅かに速まった。
「……っ」
落ち着け。
心を乱すな。冷静さを保て。
取り敢えず、私は状況を整理しようと身を起こした。
「何、この服……着物?」
また驚く。
時代劇でよく見る襦袢のような物に、まさか他でもない自分が身を包んでいるなんて、誰が思うだろう。
私は……こんなものを着た覚えなんてない。
軽く混乱を起こしていると、数人の足音が部屋の外から聞こえてきた。
「……誰」
どんどん近づいて来るそれに、思わず身を硬くする。
足音はピタリとこの部屋の前で止まった。
「っ」
からりと音を立てて、障子が開かれる。
障子の向こうに居たのは、着物に身を包んだ二人の男の人。
男の人達は私と眼を合わせると、無言のまま部屋に足を踏み入れた。
後手で障子を閉めて、ゆっくりと腰を降ろす。