裏道万屋の事情
『―――という訳です。』



あの後あたし達四人は適当にご飯を食べるお店に入った。

焼そばは先程急いでお腹に納めた。
もっとゆっくり味わいたかったのになぁ〜…。


そして樹里に厳しく問い詰められたあたしは、万屋の家にお世話になるまでの経緯から今している依頼の説明まで、ちょっとばかしハショりながらも全て吐かされた。

参った参った……。


まぁ単にどう話すかが面倒で何も言ってなかっただけなんだけどね。



「何でそんなおもしろいこと教えてくれなかったの〜??!!」


…いや、ね??樹里ちょん??

当事者のあたしは全くおもしろくないですからね??



「まさかお前がそんなことになってるとはなぁ〜…。小さい頃から何かと厄介事に巻き込まれてるよな、菜子は。」

『マジ波瀾万丈だよ。テレビで紹介してやろうかなあたしの武勇伝っ!!』

「でも羨ましいわー…。だってさ、あんなイケメンの二人と一緒に暮らしてるんでしょ?!一粒で二度おいしいじゃん!!!!」

『いやいやおいしくないよ??全然。何なら変わろうか??まぁかなりヒドイのは片方だけなんだけど…人使い荒いわ、嫌味ガンガンぶつけてくるわ…――』

「……へぇ〜??誰が??」

『そりゃぁもちろん輝さ……。っ?!』

「…ほぉ〜。俺が…??」



ゆっくりと振り返ってそこに居た男を見たあたしは一瞬にして凍り付く。

おまけに体中の血の気が引く。





で……………


出たぁ〜〜〜っ!!!!

ドS鬼畜男!!!!!!



噂をすれば何とやら――

あたしの真後ろには笑顔だけど目が全然笑っていない、腕を組んで仁王立ちした輝さんが立っていた。

それはそれは、貫禄のある立ち姿で―――。










―――さようなら。

みんな…。







何故かあたしは咄嗟に死まで覚悟したのだった。
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