裏道万屋の事情
『何というか〜……一般的にはその相手のことを考えると、あったかくなって胸の奥辺りがドキドキもやもや??だっけ…??するらしいよ。』


あたしは樹里が前に言っていた事を必死に思い出して言葉にする。

本当あたしってこういうの縁無いからなぁ〜。

誰かを好きになったことって、今思えば今までに一度も無いや。

友達を好きとかならいっぱいあるけど、それとはやっぱり違うものなのかなぁ??

う〜〜ん………

分からん………。


今度樹里ちょんに聞いてみよ――………いや、やっぱ止めとこう、うん。



あたしが一人でそんな事を考えている、その時だった。





突然嵐に手を握られた。



『へっ???!!!』



何の前触れもなくそんな事になり、あたしはかなりテンパった。

そして、あたしの顔をじっと見つめてくる嵐の綺麗な瞳に、あたしは釘付け――。



「これが、『付き合う』??」



余裕綽々な顔で平然とそんな事を聞いてくる嵐。
いや、多分本人は素なだけなんだろうけども!!


『ぇ、や…これはちょっと違う…??ほ、ほらっ!!どっちかが告って想いが通じ合ったら初めて付き合うんじゃないっ?!』

「…ふーん…。」


そう言って嵐は手を離し何もなかったかのようにまた黙る。

な、何なのもう!!
心臓がバクバクだっての!!


あたしは居ても立っても居られなくなり、照れを隠すためおもむろに立ち上がると海水に手を伸ばした。
手で水を掬う。


バシャッ バシャッ


「っ?!」


あたしは掬った水を嵐目がけてぶっかけた。



『も、もう遅いし帰ろっ?!』



あたしはそう言って、水を滴らせたままこっちを見ている嵐を残して先に家に向かって全速力で走った。



ダメだ!!!!
顔が熱い…。

何か絶対あたしおかしいってばっ……!!!!




















「…もやもや…してる、かも。」



胸に手を当ててそう言った嵐に、先に行ってしまったあたしは気付かなかった。
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