裏道万屋の事情
『ふうぅぅぅ〜……生き返るぅ〜〜〜。極楽極楽…。』


湯槽に浸かりながらおばあさんみたいなセリフを言うあたし。

でも疲れたときに入るとこう言いたくなるくらい本当に気持ち良いよね?!

まぁあたしは言っちゃうけどさっ。



『…………。』


無意識にさっき嵐に握られた右手を目の前にかざす。



――「これが、『付き合う』??」――


嵐に言われた言葉が頭の中でエンドレスリピート…。


あのときの嵐の真っ直ぐな綺麗な瞳が目に焼き付いて離れない。




あれが『付き合う』だったら――…

あたしちょっと嬉しいと思ったかも………??



そこまで考えてあたしは巡った思考を強制終了。



『ぁあ〜〜〜っ止め止め!!!!こんなんあたしらしくもないっ!!もう忘れよう、今日は何もなかったんだ!!』



湯槽の中に口まで沈む。



ぶくぶくぶく…



何だろう。

この気持ち―――



やっぱ、変。

変だよこんなの。



あたしは沸き上がる感情を必死に押さえた。

その感情が一体何なのか、あたしはよく分からない。




『…考えないようにしよ。』



あたしは気持ちを押し隠した。











その感情が何なのか気付く前に――…
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