裏道万屋の事情
『そこ』は本当に『そこ』だった。


さっき居た場所から歩いてすぐそこ。



いきなり立ち止まったかと思ったら嵐はおもむろに何かを取り出した。



それは大量の線香花火。



ファミリーパックのが全部あるらしく、当たり前だけどかなりの量だ。






って…。おいっ。

お前何やってんだ???!!!



『何やってんのっ?!嵐が隠し持ってたのかよ!!!!みんなにバレたらガン切れだぞガン切れ!!!???』

「大丈夫。今から証拠隠滅するから。」

『えっ?!』

「はい。」



あたしは嵐から線香花火の束を受け取った。

あたしこんな束で持ったの初めてだよ。



「パシリの特権。ただパシリやらされるだけじゃ癪じゃない??」

『…それもそーかっ。嵐頭良いね!!よっしゃ、二人だけでみんなの分楽しんじゃおっか!!!!』



そーだ!!!!
使われるだけのパシリはただのパシリだ!!!!

ここは嵐の提案に乗っかってみんなより楽しんでやるっての!!!!!!


ってか嵐も良い性格してんなおいっ。



「ん。」

蝋燭に明かりを灯した嵐はあたしに線香花火に火を付けるよう促す。


あたしは束から一本だけ線香花火を引き抜いて火を付ける。
嵐も同様に火を付ける。





パチパチ…





微かな音を立てながら線香花火が光を放ち始めた。



『何かさ、やっぱこれがないと花火は締まんないよね。さっき線香花火しないままで終わるのが物足りなかったもん。最後にこれがあってこそ!!って感じがする。』

「うん。だからだよ。」

『…ん??何が??』



あたしは線香花火の方から顔を上げ、嵐を見た。
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