裏道万屋の事情
「俺が線香花火好きな理由。」



あぁ、さっきの話の続きか。
あたしは嵐の話の続きを待った。



「線香花火って他の花火より盛り上がりに欠けるけど、でも俺はそれに劣らず頑張って明かりを灯してる所が好き。」

『なるほどね。』

「最後にする線香花火が終わっちゃうと夏も終わっちゃうから。夏との別れを惜しんで、弱々しい光でも出来る限り長く保って夏を繋ぎ止めようとしてるみたい。」

『ぷっ、ロマンチスト〜。』



嵐の視点からこの世界はどう見えているんだろう。

ちょっと………いや。大いに気になる。



嵐だからこんな事もさらって言えちゃうんだろうな。


―――でも、


悪くないかもね。

嵐のその解釈。



「俺も線香花火になりたい。」

『線香花火に…??』



どーゆー意味??

体中から火花を発したいのか????



「中身が弱い俺だけど、それでも懸命に生きていきたい。輝いていきたい。この線香花火みたいに。」





ザザーン………





波の音が響き渡り、またすぐ静寂に包まれたその時、





ポトッ





『…ぁ。』



あたしの線香花火の火は静かに地面へ落下した。
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