裏道万屋の事情
「お前も大変だな、あんなやつ友達に持っちまって。」
「あはは〜確かに菜子と一緒にいると毎日が非日常になりますね!!」
石段に並んで座り、ラムネを飲みながら話す樹里と輝明。
もちろん焼きそばは買っていない。
この2人は簡単に人(特に菜子)のパシリになるような人達ではなかった。
人混みが嫌いだと言う輝明に樹里が提案して、ラムネ(輝明のおごり)を買って人混みから少し離れて祭りの様子が見渡せるこの場所に来た。
「だよなー。俺も弘も、あいつには会ったときから調子崩されっぱなしだ。」
「逆に調子崩されない人見てみたいですけどね。」
「1人だけいるぞ、崩されてねぇ強者が。」
「ぇえ??!!」
「ほら、あのボーっとしたやつ。」
「あぁ、嵐くんですか??」
「そ。むしろ菜子の方が崩されてるな。」
「確かに。何て言うか、嵐くんって色々とストレートに言うところがあるし…。」
「…まぁでも、嵐も良い意味で崩されたのかもしれねぇな。」
「…え??」
樹里は輝明を見た。
輝明は自分の手に持つ未開封のラムネをじっと見つめていた。
しかしラムネを見つめるその瞳は、何だかもっと違うものを見つめているように感じられる。
「ああ見えて、嵐にも昔色々とあったんだ…。簡単に言えば、今の…今日の、『焼きそば食べたい』とか『射的やりたい』とか言う嵐がいるのは、少なからず菜子の影響が大きいんだよ。」
そう言った輝明はふっと笑い、ラムネのビー玉を押した。
ラムネの瓶からは、祭りから照らされる光に反射してキラキラと輝く液体が、シュワッと音をたてながら溢れた。