裏道万屋の事情
「あのバカ…病人に水ぶっかけるやつがあるかよ…。しかも誰が後始末すると思ってんだ…。」



そう言いつつ、口許が緩みフッと笑みを溢す輝明。



「やれやれ…全く仕方無いなー。本当菜子ちゃんには敵わないよ。」



弘久も思わず苦笑する。



「おい大丈夫か嵐??」

「…………。」



…冷たい。


水をかけられたことにより、何故かある情景が嵐の頭に浮かんだ。





――それは、夜の海。



海で一緒に話をした、『誰か』。


恋について何とかして自分に説明しようとした、『誰か』。


突然自分に海水をかけて逃げた、『誰か』。





そのときその『誰か』に確かに“もやもや”した、自分――…






それは………



その『誰か』は――…























――ズキッ――



「………つっ…」

「嵐??頭痛むのか??」

「……ん…平気……。」



…もう少し。


あと一歩で思い出せそうだった何かに近付いた瞬間、それを拒否するかのように痛んだ頭。


一体自分は何を忘れてしまったのだろう…。


ただ1つ確信したのは、


それはとても特別で…





――大切だったということ。



嵐は頭痛を抑えるためそこで思考を止めることにした。















見ると反射的にイライラしてしまったあの女…



自分に水をぶっかけて笑って指を差したあの女…










――イライラするのに何故かずっと目に焼き付いて離れない。
























「な…何でずぶ濡れなんですかぁっ??!!」



あの後、輝明と弘久と嵐は看護婦さんにこっぴどく叱られましたとさ。



「「「何で俺(僕)達が…。」」」



教訓 21... -end-
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