裏道万屋の事情
「ナオ、アラシ。休憩行ってきて良いぞー。『前みたい』に約束破らないでちゃんと一時間で戻ってこいよ??」
仕事をはじめてしばらく経つと、ユウさんがあたしと嵐にそう言った。
「…『前みたい』…に…??」
嵐が不思議そうに繰り返して言った。
「前はお前らが時間通りに戻ってこなかったからめちゃくちゃ大変だったんだからな?!分かったらさっさと行った行った!!もう休憩は始まってるからな?!」
『ちょ…ユウさん?!』
ユウさんはあたしと目が合うとウインクをして仕事に戻っていった。
ユウさん…
もしかして…
輝さんに嵐のこと聞いたのかな…??
だからさっき、わざと『前みたいに』を強調して言ったの…??
――バシッ――
「いったぁっ???!!!」
誰かに頭を叩かれたあたしは両手で痛みが残る部分を押さえた。
「何だ不審者かと思ったらお前か。んなとこに突っ立ってんじゃねぇよポチ公!!早く休憩行ってこい。」
『誰が不審者だ!!!!しかもあたしが悪いんかい!!!!』
思いっ切り叩きやがって…
あたしの頭を何だと思ってんだコノヤロー…!!!!
「…辛気くせぇツラしてんじゃねぇよ。前と同じようなことしてりゃぁその内思い出すだろ??」
『っ!!輝さん…。』
「早く行ってこい。」
やっぱり…!!
輝さんがユウさんに嵐のこと説明してくれたんだ。
『嵐っ行こう!!』
「は…ちょっ、あんた…」
あたしは嵐の腕を引っ張って店から走り出した。