裏道万屋の事情
――ガシャーン!!!!――
「おいポチ公何やってんだ!!!!今グラス割っただろ?!」
『………。』
輝さんがそう言って側に来たが、あたしはピクリとも動けなかった。
足はオレンジジュースがかかり、割れたグラスの破片で少し切ってしまっている。
なのに、その冷たさも痛さも感じられない。
何であんなこと聞いちゃったんだろ。
何て言ってほしかった??
ヒナじゃくてあたしが好きだと…
言ってほしかった…??
今の嵐がそう言うハズが無いことなんて分かりきっていたのに――…
ただ後悔だけが残っている。
「………菜子…??」
輝明は暖簾の隙間から店内の様子を覗いた。
そこには嬉しそうに笑っている女の子に腕を引っ張られて外へ出ていく嵐の後ろ姿があった。
「(…原因はあれ、か…。)」
輝明は菜子を抱き上げた。。
「輝ー??何か割れた音したけどどうかした――って、何でお姫様だっこ?!一体どうしたの??」
「あぁ、丁度良かった。弘、ここ片付けといてくんねぇか??俺こいつの足の手当てして来るわ。」
「う、うん。菜子ちゃん大丈夫…??」
『…………。』
「…重症なのは足の怪我じゃねぇってか…??」
輝明と弘久は顔を見合わせ、表情を曇らせた。