裏道万屋の事情
「ねぇねぇ、あっちの方行かない??昨日ね、あの辺りできれいな貝殻見付けたんだ〜!!」

「…うん。」



嵐と雛乃は比較的人が少ない海岸沿いを歩いていた。


嵐は無意識の内に立ち止まり、海をボーッと眺める。



「…ねぇ。ずっと思ってたんだけど、嵐は何か悩みでもあるの??元気無いよね。私で良ければ何でも話聞くよ??」

「………俺は…」

「うん。」

「…俺は、何か大切なことを忘れてるらしい。」

「大切なことって…??」

「…全く分からない。――けど、」

「…けど??」

「それは、俺にとってかけがえの無いものだった。大事な…人だったハズだ。その人の記憶が抜け落ちてることで、心にポッカリ穴が開いてるみたいな気がする…。」

「うん…そっか…それってすごく辛いよね。――早く、思い出せると良いねっ!!」

「…うん。」





雛乃は嵐の横に並び、一緒に静かな海を眺めた。
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