裏道万屋の事情
『ぇ…、え??これ…貰っちゃって良いんですか…??』

「…あのなぁ〜……。」


輝さんは立ち止まったかと思うとあたしに渡したばかりのアイスキャンディーを奪い取り、あたしの頬をそれでぐりぐり押し始めた。

『あぃだだだだっ!!ちょ、輝さん!!痛冷たいってば……!!!!!!』

「遠慮し過ぎっとなぁー損ばっかすんだぞ??わかったらづべこべ言わずにありがたく貰っとけ!」

『あだだっ!!…ひゃぃっ……。』

「んじゃあ…帰るか。」


輝さんはそう言うとあたしの手にまたアイスキャンディーを握らせ、先に歩き始めた。


『え、あの……??……!』


―――そうか。

輝さんはこれを…『家に住んで良い』って分からせるために、わざわざ遠回しに教えてくれたんだ。


本当、弘さんの言う通り素直じゃないんだね、輝さん。


でも、そんな輝さんの不器用な優しさ、すごいありがたいなぁ…。


『はい!!遠慮し過ぎは損の元ですもんね。帰りますっ!『家』にっ!!これもありがたく戴きまーす!!!!』


あたしは輝さんの後を追いながら貰ったアイスキャンディーを頬張った。

口のなかいっぱいにさわやかなソーダ味が広がる。

少し溶けていたけれど、今まで食べてきたどのアイスよりもおいしく感じて、きっと一生忘れられない味だ。って―――



大袈裟かもしれないけど、何でかそう思ったよ。  


輝さんの横で笑顔でアイスキャンディーを食べていると、











「…お前そうしてるとマジポチ公って感じだよな。」

輝さんはニッと憎たらしい笑いをしながらこっちを見る。


『〜〜〜〜っ!!!!!!(アイスキャンディーを頬張っているため声が出ない)』



きぃ〜〜〜〜っ!!!!!
やっぱ前言撤回!!!!

この男、優しくなんかなぁぁぁ―――いっ!!!!!!
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