裏道万屋の事情
「さっき海に落ちたとき…急に記憶の一部がフラッシュバックしたんだ。」
『うん。』
「実は前に菜子が病院で俺に水をかけたときも、同じ場面を思い出した。」
『どんな場面??』
「夜の海岸…誰かと2人で並んで座って何か話してた。その人は話の途中に、俺に手で掬った海水をかけてどっかに行っちゃった。」
それって………
もしかしてこの海へ初めて来て働いた日の夜のこと…??
あたしが仕事の後どうしても海に行きたくなって、嵐と一緒に行ったあの夜の海。
2人で恋バナとも言い難い恋バナをしたんだっけ。
で、いても立ってもいられなくなったあたしは嵐に海水をぶっかけて先に逃げ帰っちゃったんだよね。
「病院のときは一体誰と一緒だったのか…そこからどうしても思い出せなくて…。けど、今回は違った。」
『どうしてだろう??』
「菜子が俺の腕の中にいたから。思い出しかけてるときに菜子を見て、全てが繋がったんだ。その瞬間に、一気に全ての記憶が戻った。それから、泳いでこの海岸までたどり着いた。」
『そうだったんだ…』
何だかまだ信じられない。
けど、やっと思い出してくれたんだ。
本当に良かった…!!