裏道万屋の事情
夕飯を終え、お風呂も済ませたあたしはみんなのいるリビングに行った。


『お先でーす。…あれ??嵐は………??』

「あれ、本当だ。もう行っちゃったんじゃないかな??とりあえず、僕お風呂入ってくるね。」


弘さんはそう言うとお風呂に行ってしまった。


『行っちゃったって…今日流れ的に泊まってく訳じゃなかったんですか??明日日曜だし。ってか、いきなり消えちゃうんですか?!』

「だから言ったろ??あいつは猫みたいなヤツなんだ、って。いきなり来たかと思えばいきなりいなくなる。名前の通り『嵐』だよな、全く。」


羽野 嵐―――

本当に謎めいた人だ…。


『ねぇ輝さん…。』


あたしは思い切って輝さんに聞く決意を固めた。


『嵐は――どうして…どうして親がいないんですか……??嵐は一体何を抱えているんですか――??!』


そう言った瞬間、輝さんは目を丸くさせてあたしのことを見てきた。


「あいつが…嵐がお前に教えたのか…??親がいないって……。」

『…はい。さっき夕飯を作ってるときに。』

「…そうか。まさかあいつが自分のことをお前に話すとはな………。」


輝さんはしばらくじっと何かを考えてるみたいだった。きっと、嵐はあたしの計り知れない何かを抱えているんだと、そんな輝さんから感じられる。

しばらくして輝さんが口を開いた。


「…おい、菜子。」

『…はい。』

「あいつの過去を聞いても、今まで通り接すると…約束できるか…??」

『…はい!』

「なら、教えてやる。」


なんか緊張する。
あたしはドキドキしながら輝さんの次の言葉を待った。



















「あいつは…嵐は――…実の母親に捨てられたんだ。」
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