裏道万屋の事情
やることがあると時間が過ぎるのはあっという間。

気付いたらもう7時だ。

輝さんと弘さんが来てから一緒に朝食を済ませ、部屋に戻って二日ぶりに制服に袖を通す。

学校の支度を終えたあたしは玄関に向かった。

ローファーを履いていると弘さんが来た。


「もう出かけるの??」

『あーはい。でも嵐来てないですよね??もしかして忘れてるのかな。』

「嵐くんなら有り得そうな気がしなくも無いけど…。」


苦笑する弘さん。

うん…何か本当にそんな気がしてきた。


『ギリギリになっちゃいそうなんであたしもう行きます。もし嵐が来たら先に行ったって言っといてもらえますか??』

「はいよ。じゃ、気を付けて行ってらっしゃーい。」

『行ってきます!!』


ガラッ  ドンッ


『ぶっ………!!!!』


玄関を開けて歩きだしたあたしは勢い良く何かに突っ込んで顔面を思いっきりぶつけた。

痛い………………。


『うぅ…鼻がつぶれて低くなるぅ…。一体何に……』


あたしが顔を上げるとそこにあった何かは嵐だった。


「ちょりっす。」

『ちょり〜っす…じゃなくて!!!!何でこんな場所に突っ立ってんのさ!!??思いっきり顔面から突進しちゃったじゃんっ!!!!鼻つぶれたよ鼻?!低くなったらどーしてくれんのっ??!!』

「大丈夫。鼻が高くても低くても菜子は可愛いから。ね。」

『………………………。』


そんな甘い言葉をさらりと吐いた嵐はあたしの頭をよしよしと撫で始めた。

何故この人はシラフでこんなことが言えるんでしょうか―――

発言者によってはこれ完璧口説き文句じゃないっスかね………。


あたしは面食らって、もはや戦意喪失。


『も、いーや…。とにかく早く学校行こう。』

「うん。」


あたし達は学校へ向かった。





一方、その頃万屋では―――


「輝………これから夏がやってくるけど、菜子ちゃんと嵐くんは春に戻るみたいだよ。」

「は…………??」



教訓 6... -end-
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