俺様姫とヘタレ王子の恋愛事情
「しっつれいしまぁーす!」
楓は勢い良く数学準備室の扉を開けた。
「ひやぁっ!」
変な声と共に何かが崩れる音がした。
「あはは。先生、ビックリし過ぎですよ。はい、ノート(笑)」
扉の開く音にノート落とすくらいにビビるってコケるって先生としてどうよ?
私は少し離れた所から楓と先生のやり取りを見ていた。
「あ、は、はい。す、すいません。」
「いいですよ。怪我ないですか?」
「だ、大丈夫です……」
こいつ、教師だよね?
しかも生徒の手を借りて立ち上がるし、声小さいし、助けてもらってるのにビクビクしてるし。
『楓、これが噂の“小野先生”?(ギロッ』
「いとー!先生にこれとか言わないの!そして、睨まない!!(笑)」
私は呆れて、無言で数学準備室を出た。
「小野先生、ごめんねー!!いとー!待ってよー!!」
楓の声に消されてたけど、小野先生が何か言ってた気がする。
けど小さい声だったから聞こえなかった。
なんかすっごくイライラする。
いい大人があんなにビクビクしてさ。
私は歩く足を止め、楓の方を向き。
『なんだよ、あのヘタレ。』
そう真顔で言ったものだから楓が爆笑してしまった。