語り話
僕らは共通してイラストや歌、小説や詩を書いて共有していた。

ある時、水泳部員の子が皆の顔が見たいと言った。

僕はぞっとした。

僕の顔は地味で暗い顔。

一瞬で僕の全てがバレてしまう気がした。

黙り込む僕を置いて、勝手に話が進んでいくチャットルーム。

一番最初に写真を上げたのは言い出しっぺの水泳部員の子。

水泳パンツにゴーグルと黄色の水泳キャップ、少し色黒の肌できれいに腹筋が割れていた。

彼の顔は全くわからなかったが、僕とは違う世界を生きている人だと痛感した。

周りの皆は『顔が見えてない』とか『腹筋ヤバww』と盛り上がる中、僕は言葉に困り、皆の言葉を真似ただけだった。

ミズギ《うるせー!
    次はワシな!

次に指名されたのはアニヲタの子。

ブーブーと文句を言いながらも彼も写真を載せた。

映された顔は人懐っこい子犬のような雰囲気の茶髪の男の子。

どう見ても僕とは違う世界。

僕は自分の中にある何かが、どんどんと沈んでいくのを感じた。

ミズギ《ただのイケメンじゃねぇか…
   裏切り者ー!!

マオ《わー。
  これはあかんやつやー。

名無し《ただの自慢きましたー

僕は皆に混じって嫌味を言うことで、自分の中の変動を悟られないように振る舞った。

ワシ《え、なにこれ?
  俺いじめられてる?
  いじめられてるの?

ミズギ《はい、黙れー。
   次はマオさんどうぞー

この言葉にはドキッとした。

沈んでいたはずの何かが一瞬浮き上がったような気がした。

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