語り話
マオ》

じゃあ、一ヶ月だけ付き合ってあげる
その一ヶ月で私がナカムーを好きになれば
そのまま彼女になる

だけどそうじゃなかった場合。
きっぱり私の事を忘れて
金輪際関わりを持たないこと。

それでもいい?





冷たい言葉で綴られた提案は、俺の唯一の希望だった。

マオと付き合える!

それは嘘でも嬉しかった。

その提案に乗った日からマオは昔と同じように連絡をくれた。

俺は嬉しくてただただ彼女に突進していた。

だけどそんな楽しい日々は長くなく、あっという間に残り一週間を切っていた。

俺は恐る恐るマオに聞いてみる。

「俺の事少しは好きになった?」

俺の感情は膨らむばかりで止まらないが、彼女は違った。

「全然。」

普段の優しい返答とは真逆の冷たく単調的な声。

俺は悟った。

一週間後、彼女は再びいなくなると。

ならば…。

最後に一度で良いから会いたい。

俺はその想いだけで東京行きの夜行バスのチケットを買った。

マオにその事を伝えると彼女は苦々しい声でこう答えた。

「ごめん。会えない。」


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