語り話
その電話は翌日の昼間にかかってきた。

「…もし…もーし?」

若干の二日酔いで朦朧とする頭を奮い起こして電話に出る。

「あ…もしもし?ナカムー…?」

その声はマオだった。

俺は勢いよく起き上がると目眩と吐き気がした。

「うっぷ…。ま、マオ?」

「うん。今大丈夫?」

「あ、あぁもちろん。」

「今日の夕方なら会えるよ」

「えっ!?」

電話の向こうから他の人の声がする。

どうやら女性らしい。

"私のせいで会わないとかかわいそーでしょーが!"

"電話中だから騒ぐなよ…"

その奥から男子の声もした。

「誰かと一緒にいるの?」

「あ、うん。今病院で…。ちょっとあんたら黙ってよ!」

いつもの元気なマオの声だった。

俺は少しほっとした。




「もちろん会うよ。どこに行けば良い?」





場所は何もないベットシティだった。

あの子は俺よりも先に駅で待っていてくれた。

夢にまで見た本当の彼女。

いままで穴が開くほど写真を見続けたせいか、あっという間に遠くからでもマオを見つけられた。

彼女は結構細身で、黒のタイトなコートを着ていた。

写真で見た彼女よりも後ろ髪が短くなっていたが、前髪は写真と変わらず片目を隠していた。

「よっ。」

ちょっと照れたような困ったような顔をしてマオが右手をあげた。

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