語り話
俺は彼女が見えなくなると小さく呟いた。

「俺は君が。マオが。大好き…でした」

俺が最後に言えなかった言葉。

最後まで言わなかった言葉。

君を困らせたくないから。

飲み込んだ言葉。

だけど、忘れてほしくないから伝えられなかった言葉。

今やっと過去形で呟いたよ。

君の中では現在進行形であってほしくて、俺の最後のわがまま。




その後、もちろん彼女とは付き合えなかった。

わかっていたことだから仕方ない。

そして驚くことに俺には彼女ができた。

友達の紹介で知り合ったちょっと変態で、ちょっと変人で、ちょっと難有りな彼女。

それでも俺に柴犬のようになついてて、こまめにメールを送らないと電話してくるほどに熱烈な彼女。

面倒だけど、幸せだった。

だけど、時折思う。

マオは幸せかな?

俺は君のためならこの想いに死ぬまで嘘をつき続けても良い。








愛しい君へ。





今、泣いていたりしませんか?





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