誠を掲げる武士


服を捲って確認してみたり、くまなく体に傷がないかみていく。


「…ない…?」

というか、まず体のどこにも痛みを感じない。


でも、事故には必ず遭っている。


この手に子どもを抱きしめた記憶はしっかりとある。


だから、自分は病院にいるはずなのだ。


「…いやでも待って。あの事故からだいぶ月日が経って、怪我も完治して、お父さんたちが別のところに私を連れて行っていたとしたら?」


そうすると、服装が昨日着ていたものでなかったらいいのだ。


ゴクリと唾を飲み込み意を決して、もう一度、自分の姿を見下ろす。


「はぁ、マジか…。」


着ていた服装は…昨日と全く一緒で、黒色のティーシャツに茶色のワイドパンツ。


いうならば、今の気温にしてこの格好はだいぶ寒くて、まるで春先の気温である。


あんなに昨日は暑かったのに…何故?


そこでも疑問が出てきて、私はとうとう今の現状に思考が付いていかけなくなった。


何故自分は事故に遭ったのに無傷で、知らない部屋で寝ていたのか。


もう少し自分の頭が賢ければ、この難解な問題も解けたかもしれない。



いいや、もうここの人に聞くしか他ない。


ぐるりと部屋を見渡すが、誰もいない。


…まあ、こういう時は下手に動けば迷子になるので、この部屋でゆっくりしていよう。





< 10 / 18 >

この作品をシェア

pagetop