誠を掲げる武士
服を捲って確認してみたり、くまなく体に傷がないかみていく。
「…ない…?」
というか、まず体のどこにも痛みを感じない。
でも、事故には必ず遭っている。
この手に子どもを抱きしめた記憶はしっかりとある。
だから、自分は病院にいるはずなのだ。
「…いやでも待って。あの事故からだいぶ月日が経って、怪我も完治して、お父さんたちが別のところに私を連れて行っていたとしたら?」
そうすると、服装が昨日着ていたものでなかったらいいのだ。
ゴクリと唾を飲み込み意を決して、もう一度、自分の姿を見下ろす。
「はぁ、マジか…。」
着ていた服装は…昨日と全く一緒で、黒色のティーシャツに茶色のワイドパンツ。
いうならば、今の気温にしてこの格好はだいぶ寒くて、まるで春先の気温である。
あんなに昨日は暑かったのに…何故?
そこでも疑問が出てきて、私はとうとう今の現状に思考が付いていかけなくなった。
何故自分は事故に遭ったのに無傷で、知らない部屋で寝ていたのか。
もう少し自分の頭が賢ければ、この難解な問題も解けたかもしれない。
いいや、もうここの人に聞くしか他ない。
ぐるりと部屋を見渡すが、誰もいない。
…まあ、こういう時は下手に動けば迷子になるので、この部屋でゆっくりしていよう。