誠を掲げる武士
ミブロウシグミ…。
……いや、まさかねぇ。
いくら私が歴史が好きだとしても、そんな事はあり得るはずがない。
今の所、起きてからあり得ないことだらけだけれど。
「すいません、ちょっと混乱してて…。
…ちなみに、今年は何年ですか?」
神様仏様、ありとあらゆる神様。
どうか、どうか、これ以上あり得ない事を起こさないでください…!
「──文久三年だが?」
「はい…?」
もうわからなくなってきた…。
文久3年て?
西暦でいうと?
…薩英戦争が文久3年…つまり、1863年。
私がいた年代は、西暦2018年。
150年くらいの時代の差がある。
この人たち、私にドッキリを仕掛けようとしているのでは?
あたりをもう一度ぐるりと見渡した後、もう一度正面の男性を見つめる。
しかし、この人が嘘を言っている風には、全く見えない。
朝からあり得ない事しか起きていない今、もうこの人のあり得ない話も、あり得ないけれどそれがあり得てくるような…そんな気がしてきた。
「すいません…ミブロウシグミとは、壬生川の壬生から始まる、あの壬生浪士組ですか?」
「おっ、よく知ってるなあ。
私たち、有名になってきたのか?」
がっはっはと、豪快に口を開けて笑う男性に反して、私は余計頭を悩ませる一方だ。
なんかもうわからないけど、今の状況から進むには一度、この不可思議な出来事を飲み込むしかあるまい。