誠を掲げる武士
コンビニの前の横断歩道を、青点滅の時に渡りきった時、前からぽんぽんっとボールが飛んできた。
えっ…、ボールやばいんちゃ…?!
その瞬間、私の横を子どもが横切った。
はっ、嘘やろ…!
自分は青点滅で横断歩道を渡ったということは、今は赤ということで…。
急いで振り返り子どもを確認すると、その子は道の真ん中で、ちょうどボールを抱えたところだった。
普段からあまり交通量が少ないところとはいえ、横断歩道には変わりはない。
「っぼく、危ないからはよ戻っておいで!!」
そう子どもに大声で伝えた瞬間であった。
「ププッー!!!!!!」
ものすごい音のクラクションが辺りに響いた。
音のした方へ視線をやると、向こうからトラックがやってきているではないか…!
そう認識した時には、私はなりふり構わず、その子どものところへと走り出していた。
遠くの方で、コンクリートとタイヤが激しく摩擦している音が聞こえる。
どうか、どうかっ、どうかっ…!!
間に合って──…!!!
自分の動きが、景色が、とても遅く感じる。
頭の中には、これまでの思い出が猛スピードで駆け巡っている。
ッあと少し…──!!!!
めいいっぱい伸ばした両手に、人の温もりを感じた瞬間。