誠を掲げる武士
俺は渋々腰にかけた手を離し、座り直した。
「…どうする気だ、この女。」
この状況の中でも、すやすやと眠っている女に苛々は募るばかりだ。
チッ、しばいて起こすか?
「いやあ、どうしたもんかなあと思い悩んでいる最中だよ。」
困ったなあと苦笑いしながら、ぽりぽりと眉毛をかくかっちゃんの困った時の癖は、昔から変わらねえ。
「売りゃあいいじゃねえか。
金はいくらあっても困ることはねえしな。」
こんな御時世だ、少しでも金になるならと思ってしまうのも致し方ない。
「しかしだなあ、こういう身なりの女子を連れて行っても受け入れてもらえるかどうかと思ってなあ…。」
「っ…確かに。」
異国のモンだったら、受け入れてもらえるところなんてありゃしねぇ。
ましてや、俺らが売りにきたとなると、変な噂が余計広まっちまう。
それは大いに避けたいことだ。
「そういや、近頃のお前の部屋がすごいことになってると聞いたのだが。」
そう言ってかっちゃんは、ちらりと俺の背後に控えている配下の者に目をやる。
…チッ、告げ口しやがったな。
「そんなこたぁねえ。今日少しは片付けたしな。」
毎回部屋が汚すぎると、俺の部屋に遊びにきたかっちゃんに叱られる。
別に片付けられないと言うわけでない。
ただ…仕事もたんまりある中で、片付けに時間を費やすのが面倒なだけだ。