永遠の貴方(短編小説)
いつか…
貴方が消えてしまった。
僕の貴方。



僕はアルバイトをしていた。
小さな雑貨屋で。
様々な物がある中で、僕は貴方に一目惚れをした。

「綺麗…」

僕が呟いた言葉に、主人である老婦人が振り向いた。いつもは耳が遠く、何度も何度も繰り返さなければ伝わらないご婦人なのに…

「君は…その子に魅入られてしまったのね…」
"君は?"

ならば、僕より前にも何かに魅入られてしまった人がいたのだろうか。




貴方は僕の手元へと誘われた。小さな、優しい歌を奏でるオルゴール。
その中で、貴方はただ、ただ佇んでいましたね…

僕は毎日、貴方に会うためにオルゴールを開きました。奏でる歌と共に、貴方はくるくると回っていましたね。



ある日、僕は恋をした。
貴方によく似た顔立ちの、素敵な人に。
そして…貴方を忘れた。
繰る日も繰る日も僕は恋に溺れ貴方に会うことは無かった。






…そして、月日は流れ、その恋は辛い思い出だけを遺して無くなってしまった。
僕は貴方を思い出した。
辛い恋を忘れようと、オルゴールを開いた。








貴方は消えてしまった、僕を置いて。












オルゴールは奏でる。
優しく、哀しい愛の歌を。
僕が忘れてしまった貴方との、愛を。






哀しいオルゴールと共に、僕の心も、封印しよう。




END
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