見えない異変
はっとした。

いつから鳴っていたのだろう。

チャイムが鳴っていた。

玄関まで駆けていった。

美帆かもしれない。

そんな期待とともにドアを開けた。

けれど、そこにいたのは警官だった。

当然の訪問者にがっかりした。

警官は1人。

大したことない通報だと思われたのだろう。

私にはそれが、美帆なんてその程度の人間なんだと言われたような気がして悲しかった。

警官はあれこれと尋ねてきた。

救急隊員はあまり詳しいことは伝えていないようだった。

私は一から全て説明することにした。

美帆が私の腕の“何か”に怯えたこと。

私が“何か”の存在を知ろうとネットで聞いたこと。

美帆が幻覚を見ていると分かり、やむを得ず救急車を呼んだこと。

そして、美帆が突然いなくなったこと。

細かく説明した。

警官の反応は薄かった。

事件性の低い案件にはそんなものなのかもしれないが、それにしてもやる気のなさそうな警官だ。
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