見えない異変
時計を見た。

このやりとりをはじめてすでに10分が経っている。

なんだか可笑しくなってきた。

こんなくだらないことで10分も費やしているなんて。

思わず笑い声が出てしまった。

今、この状態を第三者が見たら、きっと異様に思うことだろう。

一人の女が何かを指さし怯えている。

そして、もう一人の女は楽しそうに笑っている。

まさにこの状況こそホラーだ。

そんなことを思いながらも、美帆の恐怖の対象の正体を暴こうと、スマホを取り出した。

取りあえず、指でさされている腕のあたりを写真で撮ってみることにした。

私は左利きだから、右手で左腕を撮影するのはかなりの時間を要した。

カメラを通した腕は何の変哲もなかった。
< 4 / 23 >

この作品をシェア

pagetop