その男、危険につき ~BGM アラフォー懐かしver~
きっと、また逢える…
まだ午前中だが、
応接の客に思いのほか手こずったのか
所長が疲れた顔で頭を掻いた。
『まいったよ、もう。
財布なんて、探して無ければ諦めてくれよって。』
『あらー。落とされたんですか?』
お茶くみをしていた新人が顔を向けると、
所長は言った。
『これだけ問い合わせて
見つからんのだから無理だろうなぁ。
拾われたなら、見つかる訳もないさ。』
何でもない会話に
キーボードの指が止まる。
午前中は男からの電話もない上に
コールの数も少なく、
ジリジリしたまま、
昼休みを向かえることになった。
サンドイッチを片手に席を立とうとした、
その時。
トゥルルルル
コールが鳴った。
2度目の音でインカムを付けた。
『はい、こちらは……』
『あんただろ。』
さえぎった声は男のものだった。
『本当に時間が無いんだ。明日までに…』
『かしこまりました。どうすれば宜しいでしょうか。』
思わぬ返答に、男は少し驚きながらも言った。
『今晩、9時に氷川神社で。境内で待っている。』
そう言うと、いつものように一方的に切れた。