その男、危険につき ~BGM アラフォー懐かしver~
幸せな結末

何十段と真下へ続く石段を、
男が悲鳴もあげずに落ちていくのを、
女は無言で見つめていた。

男はさっき、何かをポケットから出そうとしていた。

たぶん、刃物か何かだろう。

女も待ち合わせ場所によっては
用意しようとしていたが、

神社と聞いて突き落とす方法にしようと
決めていたのだった。

突然降ってわいた幸せの絶頂から、
一気に落とされたやり場のない怒りと、

一生周りに知られたくない、罪の記憶。



下まで落ちたのを確認すると、
女は急いでかけ降りて行った。
確認しなくてはならない。

これは口封じなのだから。


『う…痛ってぇ…。』

男は弱々しくつぶやき、
そばに立つ女の足元に手を伸ばした。

ビクッとして引っ込める瞬間、
足首を思い切り捕まれた女は、
体制をくずし転倒した。

『キャッ。』


男は辛そうに顔を向け、
手を離さないままハイヒールの靴底を見ると、
満足そうに笑みを浮かべた。

『やっぱりだ…

コンビニの前で落としてから…ここに…。』

『あると思ってた…。』


そう声をふりしぼると、
恐怖に動けずにいる女の前で
ガクリと目を閉じた。



男の反対の手に何か握られている。

女はそれを見てしばらく考えたあと、
がく然として自分の靴底を覗きこんだ…。


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