その男、危険につき ~BGM アラフォー懐かしver~
アプローチ~接近~
いつも慌ててばかり、と
友達が見たら笑うんだろう。

思いながらも走るのをやめられなかった。

女は夕方仕事が終わると
会社を飛び出し、駅までの道を傘もささずに急いだ。

見たいドラマが始まるからではない。
さっきの電話…

悪戯かも知れないとはいえ気持ちが悪かった。

覚えのない声で名前を呼び、
返してほしいと懇願した。




もし、 悪戯ではないとしたら…

恐ろしすぎる想像がよぎり、足がもつれそうになる。

誰も気付かないと思っていたのに
見られていたのか?


誰に?


女は周りを急に気にし始めると
会社帰りにいつも立ち寄る、
コンビニへと入って雨粒を払った。


数人の間を縫って進むと、
お茶を手にしてカウンターでレジを済ませ、
視線を感じてふと振り返る。

順番を待つ大柄な女性と目が合い、
不快な表情をされた肩越しに、

何も買わずに出ていった帽子姿の男が見えた。
< 5 / 14 >

この作品をシェア

pagetop