その男、危険につき ~BGM アラフォー懐かしver~
BAD FEELING
お疲れさまの会釈をしながら、
女は会社を足早に出た。
辺りはすっかり暗くなっている。
電車に乗り、窓に写るの自分の姿を見ながら
ぼんやりと考えていた。
あのポーチの持ち主に今から打ち明けるとは
考えていなかったが、
見ていたのは誰だったのだろうと
ひたすらあの日の情景を思い返していた。
あの時、ポーチには宝くじが入っていた。
サマージャンボの連番たったの5枚。
1等4億円が当たっているのだと知ったのは、
2日後の昼休みだった。
喫煙所に居た上司に、
ついでに捨てるよう頼まれた朝刊に
載っていた宝くじの文字。
暇つぶしに番号を照らし合わせた時は、
目を疑って何度も見た。
心踊る気持ちと同時に、
結果、盗んでしまった罪の意識もあるにはあったが。
それもまた、金額の大きさに
押し潰されそうになりながらの喜びで、
いつしか消えていた。
次の休みに早々に換金をし、
口座を分けて預け直した。
両親にはちょっとボーナスが多かったといって
海外旅行をプレゼントした。
同僚や友達には、気前よく奢ったりもしたが
不審に思われたくないので、
喫茶店のコーヒー程度だ。
助けたのが私なんて、
拾ったのが私なんて、絶対にわかりっこない。
そう思っていたのに。
冗談じゃない…
女は爪を噛んだ。