王子様は13歳
「美保ちゃんは、留貴に告白したりしないの?」


こそっと、美保ちゃんに言った。
美保ちゃんはボールを下に落とした。


「こっここここ、こく、はく?」


真っ赤になっているところが可愛い。


「うん、告白」


「そ、そんなの無理です」


どうして?と私が言うと、美保ちゃんは黙って顔を押えた。


「でも、こんなに仲良いのに?」


「仲良く、ないです。 私が一方的に…。 名前で呼び合ってるのだって、私から頼んだだけだし」


美保ちゃんは落したボールを拾って、洗った。


「まどかさんは、彼氏いるんですか?」


「いないよー。 長いこと」


「好きな人は?」


「いないよー」


「美人なのにもったいない…」


そ、そんな事言ってくれるのはあなただけよ!と心のなかで叫び、美保ちゃんをぎゅうっと抱きしめた。


「あの…まどかさん。 沸騰してますけど」


抱きしめられたまま、キッチンを指さす美保ちゃん。


「あ、ごめん」


私はあわてて鍋の火を緩める。
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