初夏、満天の星

小さな命

季節は春。桜の木はまだ剥き出した状態になっていた。春だというのに、風が肌に当たると寒い。私はカーディガンを羽織り学校に毎日通った。
「寒いなぁ~。手がカサカサしてる」
独り言をブツブツ呪文のように言いながら歩いていたら、後ろから洸輝が現れた。
「おっす!今日もさみいなぁ~」
「うん。まじ寒いし。もう季節は春ですよぉ」
「そう、春ですよぉ~。俺の恋は今、冬ですよぉ~」
「えっ!瑠璃ちゃんと何かあったの?」
洸輝は今隣のクラスの【高田 瑠璃】と付き合っていた。
「あいつ、クラスの男子とイチャイチャしてるらしい。最近一緒に帰ってないし」
「そうなんだ…あんたも大変だねぇ」
「近藤はどうなんだよ」
「うちの桜は、まだ咲きませぇ~ん」
「そうだよな。お前みたいなお馬鹿ちゃんは、何時まで経っても、モテ期は来ねえよなぁ~」
「はぁ?!てめぇ~どういう意味だよ」
「ごめん、ごめん。きれんなよ。怒るとシワ増えるぞ」
「そんなにうちは年じゃないわ。ドアホ!」
「紅雨~♪おはよう。あっ、洸輝君も」
「おう荒井か。じゃ俺行くから」
洸輝はそう言い残し、走り去っていった。
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