初夏、満天の星
「紅雨ってさ、いっつも洸輝君と話してるよね。うちが見る度に洸輝と話してる」
「そう?っていうか、うちが話し掛けてるわけじゃないし」
「でも、いっつも楽しそうにしてるよ」
「そんなの気のせいです」
そう、今は気のせい。この後、私は洸輝にはまっていく。

「おはよう」
「紅雨、紗羅、おはよう」
「羅夢、今日も早いね」
「毎日朝練してるからね」
羅夢はテニス部で、キャプテンをしているエース。
「ちょっと見てこれ!」
紗羅が大きい声で言った。
「何、何?!」
それは、紗羅の机に書かれた文字。
「「君を心から愛している」だって…。きもいよ…」
「誰だろ?こんなこと書くの?」
「でも…どこかで見たことある字形だね。とにかく消そ?」
「でも…これマジックじゃない?水性かな?」
「水性だよ。ほら!うちの汗で濁ってるし。雑巾濡らして拭こ」
三人で羅夢の机の落書きを消した。
「ありがとね」
「いいんだよ!でも、誰だろう…」
「分かんない」
ーガラッ!
戸が開いた向こうには井立先生がいた。
「ほら、早く席につけ。今からホームルーム始めるぞ」
私はふと思い出した。誰が羅夢の机に文字を書いたのか。私は書いた主が誰だか予想できた。
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