On Your Mark
「彼女の笑顔を見て、僕は助けたいと思ったんだ。

レイも同じことを思っている」


レイを見ると、力強く何度も頷いている。



涙が溢れてきて、それは情けないほどとめどなく溢れ出てきた。


「ツバサだって、本当は渡せばいいとか思っていないんだろ。

人の求めるものが分かる能力、人の感情が分かる能力、この二つだけじゃ駄目なんだ。

彼女を助けるためには、人の行動が分かる能力が必要なんだ」


「ツバサ、行こうぜ」


教室に横たわっている女の子を見る。



肌の色が美しいまでに白く、そこから生えている羽根はもっと美しかった。

この美しさがこちらに迫りくるものたちに渡ってしまったら・・・


「そんなことしたら、俺たちは死ぬかもしれない」


「・・・かもね」


「だろうな」


「でも、どうせ死ぬなら、人を殺して死ぬよりも、人を助けて死んだほうがいいじゃん」


助けたい・・・ではない。



今、僕たちの目の前にある美しさが汚されることが、何よりも嫌だった。


「どうなっても、知らねえぞ」


涙を拭い、僕は手を目の前に差し出した。
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