On Your Mark
「ツバサ・・・ありがとう」


優しく微笑みながら、イビルがそっと手を重ねてきた。


「決まりだな」


勢いよくレイが僕たちの上に手を乗せ、嬉しそうに歯を浮かべた。



学校のときから三人が何かを決めるとき、こうして円陣を組むのだ。


「おいで、起きているんだろ?」


教室に向かってイビルが声を掛け、その方向を見ると女の子が弱々しく立ち上がっていた。



ゆっくりとだがこちらに向かってくる女の子に、僕は再び見惚れそうになった。


「起きてたのか」


「言葉は通じていない・・・よな」


「良いことは言葉にしなくても、通じるんだよ」


「それ、ちょっと都合良過ぎねえか?」


「ふふふ。

さあ、君はここね」


そのまま僕とイビルの間に女の子を入れ、目で手を合わせるように伝えているようだった。
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