On Your Mark
「まず、この子が人間じゃないのは見て分かるよね。

恐らく、この子は『天使』と呼ばれるものだ」


「テン・・・シ」


「そう、天に使えし者、天使だ。

昔、本で読んだことがあって、間違いないと思う」


「その天使がどうして、あそこに」


「手首に縛り付けた跡があったから、ペスチニアに捕獲されたかなんかだろう」


「どっからやってきたんだよ」


「それはもう少しはっきりしたら説明するよ」


イビルは自分の考えにある程度の確信を持てなければ、他人にその考えを口にすることはしない。

きっと、そのことについても後々説明されるだろう。


「次に能力者だ。

どんな能力までは分からないが、ペスチニアには僕ら以外に少なくとも五・六人はいると思う。

ユーシチールにも同じくらいか、もしくはそれ以上」


「どうして分かるんだよ?

もっと、いるかもしれないし、いないかもしれないじゃん」


「僕は自分の能力が、能力者の自分が嫌いで、小さい頃から調べていたんだ。

昔は何百人といたようだけど、時代も変わり今ではほとんど存在しないとまで言われている」


「座学ではそんなこと言っていなかったぞ」


「そりゃ、そうだろ。

そんなこと教えてしまっては、これから兵士になる僕たちに不安を募らせるだけじゃないか。

この戦争の命運は、能力者に掛かっているようなものだからね」
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