On Your Mark
僕はその考えが嫌いだった。



人間には考える頭と、それを実行できる体がある。

それらを無視して、能力だけに頼ろうとする、この世界が嫌いだった。


「ペスチニアは三つの部隊からなっているから、隊長三人はまず能力者とみていいだろう。

本部には念を入れて二人、もしくは三人がいるはずだ。

僕たちが恐らく戦場に配備されているなかでは一番若く、それ以外の能力者は幼過ぎてまだ配備できないんだ。

ユーシチールも今まで攻めてきた部隊の数を数えると、ペスチニアよりも二人くらい多い程度だろう」


「相変わらずの分析力だな。

けど、能力者には互いに能力が通じないはずだろ?

別にこれだけ焦らなくても大丈夫じゃねえか」


イビルは黙ったまま、横に座っている女の子を見つめる。

その視線で大方のことは分かってしまった。

能力者である僕たちが、ここまで逃げなければいけない理由。

それは・・・


「この子の居場所が分かるのか」


イビルは目を閉じて、唇を噛み締めた。

その仕草が悔しさからくるものなのか、女の子に対して申し訳ないという思いからくるものなのか、僕には分かるはずもなかった。

ただ、イビルのその仕草が僕に強烈なインパクトを与えた。
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